興行ビザを外国人に取得させて日本に招へいする会社様がお困りになるのが「再入国許可」と「資格外活動許可」の手続きです。
どちらも現在の制度では入管で個別に許可を取得する人が少なく、入管での手続きをサポートする行政書士でも扱ったことがある事務所が大変少ない手続きです。
再入国許可
「再入国許可」の個別許可が少ないのは働くための在留資格、いわゆる「就労ビザ」を持っている人のほとんどは1年以上の在留期限を持っているため、その手続きが原則不要だからです。
中長期在留者には「在留カード」という身分証明書が発行され、常に携帯が義務付けられています。そのカードを持った方が外国に出張や里帰りするとき、以前は「再入国許可」という手続きを取らなければならなかったのですが、今は「みなし再入国許可」という制度があるため、原則その手続きが不要です。
しかし、「興行」の期限はそのほとんどが3ケ月間か15日間です。そのため、もし最初に来日した後一旦帰国したり他国に出国したりしたのち、再度同じ「興行」で入国をしたい場合、「再入国許可」を取らないといけません。
もし取らないで出国してしまうとその「興行」のビザは終了してしまいます。せっかく最初入管にスケジュール全体を申請していたとしてもです。
その「再入国許可」にはいくつか難しい点があります。
①申請の日程
全体のスケジュールの間に出入国がある場合、最初に日本に滞在している間に「再入国許可」を入管にもらわないといけません。しかし、入管(出入国在留管理局)はお役所ですから、平日の昼間にしか開いていません。ですから、日程を組む際に最初の来日の間、どこかで平日の昼間(9時~4時)に申請するタイミングを考えておかないといけません。
原則的に申請に問題がなければ再入国許可自体は即日交付されますが、申請翌日出国というようなスケジュールを組んでしまうと、内容に不備があってその日に許可されなければ最悪ビザが終わってしまうというリスクがあります。確実に許可が取れるように慎重に進めなければいけません。
②申請できる人
興行ビザは、外国人が海外にいる前提で招へいする会社様(それを取り次ぐ行政書士)が申請することができます。しかし、再入国許可は日本に本人がいますから「原則は」本人申請になります。
例えばツアーで何十人も一斉に入国しているような場合、全員を入管に連れて行かなければならないということです。それを会社様のスタッフなどがパスポートだけ集めて代理することはできません。一方、申請取次の資格を持った行政書士などは、本人が同行していなくても申請が可能ですので、パスポートや申請書をお預かりして代わりに申請しに行くことができます。
ただし、即日交付であるがゆえに、申請書に不備があると再度修正したものにご本人のサインが必要です。すべての申請内容を正確に書くことは大変難しいため、「再入国許可」の申請に慣れた行政書士などに頼むのが安心です。
そのほかにも各地方の入管によって申請のルールが微妙に違っていたり、慣れていないとスムーズに進まないことが大変多いのが「再入国許可」の申請です。
③シングルかマルチか
再入国許可には、1回限りの再入国許可(シングル)か数次の再入国許可(マルチ)かの2種類があります。期間中に日本から出て再度日本に入ってくるのが1回だけの場合はシングル、期間中何度か日本から出入りする予定がある場合はマルチを申請することになります。シングルの場合は3000円マルチの場合は6000円の手数料がかかります。
資格外活動許可
資格外活動許可で一番よく知られているのが、外国人留学生がアルバイトをするとき必要な許可だということです。「留学」という在留資格で日本にいる場合、原則は働けませんが生活費に必要な最低限度のアルバイトは資格外の活動として許可されているということです。
留学生の場合、ほとんど空港で入国する際に在留カード発行と同時に資格外活動許可も取ってしまいますので、資格外活動許可だけ別個に取るケースはそれほど多くありません。
しかし、「興行」においてはよくそのようなケースがあります。「興行」は、「公衆に対してエンターテイメントを見せる」ことが目的とされますが、実際は来日時に同時にその方を先生にしたワークショップが行われることがよくあります。
また反対にワークショップで来日した方が1日だけショーに出演するなどといったケースもあります。そのワークショップの先生としての活動は「芸術」という在留資格での活動になるので、「興行」だけではできません。
その場合、「興行」で入国した後に「芸術」という資格外の活動をする許可をもらう必要があるわけです。「資格外活動許可」にもいくつか難しい点があります。
①申請の日程
こちらも同じく入国してからしか申請ができませんので、資格外での活動が行われる前に平日日中入管に許可をもらいに行かないといけません。ですので、週末のうちに来日して資格外の活動をしてしまうようなスケジュールを組んではいけません。
資格外活動許可は本来即日許可ではありません。日程は余裕をもって組むようにしてください。日程に余裕がないけれども資格外活動の許可も欲しい場合は、ぜひ最初の段階でご相談ください。おおもとの在留資格の申請の際から適切な方法で申請する必要があるからです。
②申請できる人
こちらも再入国許可と同様に原則本人申請になります。招へい会社の方などは代理で申請することはできません。適切な内容と申請書が用意できる行政書士に取次ぎを依頼することもできます。
③どちらの資格で申請するか?
それでは「興行」と「芸術」の両方の活動を予定している場合、どちらの資格で申請したらよいのでしょうか?
それは「主となる活動を正式な在留資格とする」ということになります。
興行で5回公演を予定していて1回だけワークショップをやるなら「興行」で在留資格認定証明書申請を行い、「興行」のビザで入国したのちに「芸術」の資格外活動をするのが正解です。
逆にワークショップを5回行い、1回だけ発表会で模範演技をする場合は「芸術」ビザで入国したのちに「興行」の資格外活動許可をもらいます。
どちらが主となる活動か迷わわれる場合は、ご相談ください。