コンサートやイベントで、外国人のアーティストや芸能人を呼ぶことになったとき、招へいする側が何をやったらいいのでしょうか?
イベンター、プロモーターと呼ばれている、いつもそれを仕事としてやっている会社(キョードーさんやウドーさんなどが有名ですね。)はいいですが、広告代理店や映画配給会社、レコード会社や事務所さんなど、常日頃自分で招へい業務をやっていない会社の担当者様は、どこから手を付けたらよいかわからないで途方に暮れているかもしれませんね。
そこで、大手レコード会社(ソニー・ミュージックエンタテインメント)で20年働き、現在は興行ビザに特化した行政書士である弊所所長がどのような順序で進めていけばよいか、お教えします。
イベント日時の選定
まず、イベントが決まり、そこに外国人を呼ぶことになった場合、最初に決めなくてはいけないのが日時と場所ですね。
日時については当然そのイベントにふさわしい時期を選ばなくてはいけませんが、ビザが取れるまでの時間も考慮しておかなければなりません。
これまで「興行」ビザの招へい機関として実績がある会社が正しい要件で申請していれば、出入国在留管理局の審査は1週間程度で終わることが多いですが、初めて申請する会社や、要件に完全にはまっていないようなケースの場合は更に時間がかかることもあります。
加えて、出入国在留管理局から在留資格認定証明書が発行されてからも、その原本を海外にいる本人に国際便で送り、その方の住んでいる国の日本領事館にそれを持って行き、パスポートにビザ(査証)を受けるための時間も読み込んでおかなければなりません。
その海外の領事館での申請からビザ(査証)の発給までには原則は5営業日かかる、ということになっています。実際は申請した領事館によってもかなり違います。例えば韓国などは申請内容に問題なければ翌営業日に発給されますし、大きな都市では4日ほどで出ることが多いです。来日が差し迫っている場合、日本での手続きを進めるのと同時並行で、この海外の申請予定の領事館との事前打ち合わせも重要になってきます。
イベントの場所の選定
次に決めなくてはいけないのが場所ですね。外国人を招へいする際に特に注意しなくてはならないのは、この場所の選定です。
日本人のイベントであれば、予想される集客や場所のイメージ、使用料金などから選ぶのが普通ですが、何気なくそのように選んでしまったら、実はその会場では興行ビザが取れないことが後で判明することがあります。
その時点で、もう会場キャンセル料が発生してしまったり、告知やチケット発売をしてしまっていたら、大変なことになってしまいます。ですから、外国人を招へいしてのイベントの場合は、場所については特に注意深く選ばなくてはいけません。
場所を選ぶ時のポイントは、
- 「飲食の提供がある施設か?」
- 「定員が100人以上あるか?」
の2点です。定員が100人以上あり、会場内で飲食の提供がない施設の公演であれば、「2号の二」という基準に当てはまることになり、報酬や滞在日数など他にクリアしなければならないポイントがだいぶ減ります。(定員が100人に満たなくても営利を目的としない日本の公私機関が運営する施設であれば適用できますが、施設が非営利目的でも運営主体が営利目的の機関(株式会社など)ではだめです。)
そのような施設であれば、まず場所の要件はクリアしたことになりますね。
そのどちらかが満たされていない場合、例えばバーカウンターがあるライブハウスでの公演が含まれていたり、イベントスペースが定員100人を満たさない小さな会場が含まれているケースは「2号の二」では申請できないことになります。
その場合は、「2号のホ」に当てはまるように「1日につき報酬50万円かつ15日以内の滞在」という条件を満たさなければいけなくなります。逆に言うと、1日の出演につき50万円以上の報酬があって、15日以内に帰国する様な短い滞在を予定しているようなケースは、それがはっきりわかる契約書などを用意すればどんな場所でも気にせず選んでよいということになります。そのような高額な報酬を予定していないのであれば、最初から「2号の二」を満たすような施設を探すことをお勧めします。
報酬の決定
次に気を遣うのは、今回来日するアーティスト等の報酬額です。もし会場が上記の「2号の二」に当てはまる施設での公演(定員100人以上飲食の提供なしの施設のみ)、レコーディングやTV出演などでの来日であれば、それほど神経を使う必要はありません。ただ「日本人と同等」の報酬が必要になりますので、あまり不当に低額な報酬ではいけません。
一方、ライブハウスやレストランなど「2号の二」を満たせない施設での公演の場合は、上記に書いた「2号のホ」に当てはまるように報酬を50万以上設定しなくてはなりません。
「報酬50万」というのは、1日当たりの1団体ごとの報酬で、1日3回公演しても、1団体が5人組でも50万以上あればかまいません。逆に複数の出演者がいた場合、それぞれに50万以上の報酬を出す契約書を結ぶ必要があります。
ただし、「2号のホ」は報酬額50万というのが必須の条件ですので、実際の公演後利益の分配でおそらく50万以上支払えるだろうということでは、絶対許可はおりません。あくまでも出演承諾書、契約書などで、公演回数、1日当たりの本人への報酬額が明記されている必要があります。
会場押さえ
日時、会場、報酬が決まったら、いよいよ具体的に準備を開始します。
会場の予約は、できれば招へいする会社(ビザを申請する会社)の名前ですることが望ましいです。もしコンサート制作会社やイベンターなどが会場を押さえているが、ビザ申請は違う招へい会社が行う場合は、両者の請負契約書(業務委託契約書)などで申請する会社が使用する権利をきちんと得ているかを示さないといけない場合があります。
申請には、使用の許可が得られていることを示す書類を出す必要がありますので、会場の予約票またはそれがない場合はこちらで作成した「使用承諾書」に押印をもらうようにしましょう。
契約書(出演承諾書)の締結
上記が固まり次第、来日する外国人と招へいする会社との契約書(出演承諾書)を結びます。
内容は、日本での具体的な活動の内容,期間,報酬がキチンと盛り込まれていないといけません。契約は、招へいする会社とアーティスト本人もしくはそのマネージメント会社が行います。もちろん契約書ですから、日本側と申請人側両方の押印(またはサイン)が必要です。この契約書が正しく結ばれていないと興行の許可は下りませんので、一番大事な書類になります。申請してしまってから、その内容ではビザが取れないとわかったら、再度契約内容を変更して先方のサインをもらう必要があるなど大変なことになりますので、事前にプロのチェックを受けることをお勧めします。
当事務所では、数多くの多様なケースの興行ビザを取り扱ってまいりました。「今回のような特殊なケースはどうなるんだろう?」というような疑問がありましたら、お気軽に電話または問い合わせフォームでお問い合わせください。最初の簡単なチェックについては、無料でご相談に応じております。