「新しいスポーツ」として世界でも注目を集めているeスポーツ(e-sports)。2018年2月には「日本eスポーツ連合」が設立され、プロライセンスの発行も始まりました。今後は国内でeスポーツの大会が行われることも増えてくることが予想されます。
ここでは、これからeスポーツの大会を主催しようと考えている企業のご担当者様向けに、外国人選手を招へいする際に必要な、興行ビザ取得の手続きについて徹底解説します。
なんらかの賞金が出ることがわかっているこうした大会にeスポーツのプロ選手である外国人が参加する場合には、在留資格としては「興行ビザ」の取得が必要になります。観光などと申告して短期滞在で入国することは法律で禁止されていますので、外国人選手の招へいを考えている企業のご担当者様は、大会までに必要な手続きをしっかりと確認しておいてください。
eスポーツの大会開催で予想されるビザの問題点
eスポーツの大会に外国人選手を呼ぶ場合に、一番心配されるのが、競技への参加者、つまりビザの申請人がギリギリまで決まらないために、実際に決まってからビザを取得するまでの時間に余裕がないことです。
必要な書類を準備する時間を除いても、実際に出入国在留管理局が申請書類を受理してから在留資格認定証明書が交付されるまでには、おおむね10日ほどかかります。そして在留資格認定証明書を海外に送りお住まいの地域の日本大使館で最終的にビザを取得するまでにも、地域にもよりますが更に約1週間~10日かかります。
また、eスポーツの大会に出場する選手はおそらくビザの取得などに詳しくない方がほとんどなので、書類をそろえるだけでも時間がかかることが予想されます。
しかしeスポーツの大会では、世界各地で行われる予選が本戦の1カ月前に設定されているということもよくあることです。そこから興行ビザを取るのはほとんど無理だとお困りの担当者様も多いのが現状です。
できるかぎり事前にビザの準備をしておく!
予選大会を誰が勝ち残るのかがわからないため、どの選手を呼ぶのかが最後まで決まらないという場合には、たとえ確定していなくても予想される出場者の書類をある程度準備しておくことが大事になります。特に申請する日本側の会社様と本人の契約書である「出演承諾書」を後から準備するのは大変ですから、予選の段階で書面を準備し、出場決定と同時に本人からサインをもらっておく必要があります。
出場者が確定したらすぐに申請できるようにあらかじめ書類の準備をしておき、まだ出場者全員が決まっていなくてもとにかく決まっている部分からどんどん進めていくことが、時間を短縮するコツです。各地の予選がまだ終了していなくても、最初に決まったところから申請してもいいでしょう。
また本国でのビザの発給申請は、原則申請人本人がその国の日本大使館(領事館)まで行かなければなりません。
本当に時間がないときには、日本で発行された在留資格認定証明書をFEDEXなど最速の方法で海外に送付・確実に受取を行い、すぐに申請に出向いてもらう必要があります。領事館でのビザ申請には必ず在留資格認定証明書の原本が必要になり、スキャンでは認められないからです。そのため、その時期のスケジュールをあけておいてもらうよう事前に本人に連絡し、申請場所・時間・その他必要書類の確認をしておくことも大事です。
少しでも時間を短縮するためのコツをまとめると・・・
- 未確定でも、予想される参加者の書類を準備しておく
- 参加確定した人の書類からどんどん出していく
- 在留資格認定証明書は、原本をEMSではなく国際宅急便で送る(日本から遠い場合)
- 本人に、ビザ発給申請に行く予定をあけておいてもらい、必要書類の準備をしてもらう。
eスポーツは興行ビザの基準<3号>
興行ビザには次の4つの申請基準があります。
1号
ライブレストラン、クラブ、キャバレーなど飲食を提供する場で1日50万以下の報酬で行われる興行、客席定員100人未満の小規模施設で営利法人が運営する施設での興行を行う場合
2号
コンサート、イベント、フェスなど、客席定員100人以上で飲食を提供しない施設で行う興行、報酬が50万以上で15日以内の滞在で行われる興行を行う場合
3号
プロスポーツ、格闘技、サーカス、プロダンス競技、プロゲーム大会など、演劇,演芸,歌謡,舞踊又は演奏以外の興行を行う場合
4号
レコーディング、撮影、プロモーションなど、有償で興行以外の芸能活動を行う場合
スポーツ選手招へいのための3号の興行ビザ
eスポーツの大会は上記の<3号>にあたります。
申請基準によって、必要書類などの要件が異なってきますので、ここで<3号>の要件について詳しくみていきましょう。
<3号>の要件として最も大事なのは、「日本人が同様の活動を行う際に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること」です。これを満たしていれば、基本的には開催場所に対する要件などは特にありません。
賞金がきちんと支払われるかどうかが最大のチェックポイントですので、企画書や運営方法、出演承諾書など、それを証明するための書類が重要となってきます。
<3号>の申請に必要な書類
1.申請人に関する書類
書類名 | 備考 |
---|---|
在留資格認定証明書交付申請書 | |
写真(縦4cm×横3cm) | 申請前3か月以内に正面から撮影された無帽,無背景で鮮明なもの |
申請人の経歴書および活動に係る経歴を証する文書 | |
申請人の日本での具体的な活動の内容、期間、地位および報酬を証する文書 | 雇用契約書または出演承諾書などの写しなど(本人サイン必須) |
滞在スケジュール | 全員分、滞在ホテル情報、フライト情報(予定でかまいません。)を含む。 |
2.招へい機関に関する書類
書類名 | 備考 |
---|---|
登記事項証明書 | 俗に「とうほん」と言われているもので、全国の法務局、その出張所で誰でも取ることができます。 |
直近の決算書(損益計算書,貸借対照表など)の写し | 会社を設立したばかりだったり、個人や任意団体での招へいの場合は、代わりになる資料を提出します。 |
従業員名簿 | 常勤の社員で、直接興行に関わっている部署についてのみで大丈夫です。 |
請負契約書 | 招へい機関が興行を請け負っているときのみ必要です。 |
3.施設に関する書類
書類名 | 備考 |
---|---|
営業許可書の写し | |
施設の図面 | 当日の設営予定図面をつけます。また、会場のホームページで客席配置図、定員などが書かれたページをプリントアウトします。 |
施設の写真 | 客席、控室、外観など |
施設の使用承諾書 | 主催者がイベント開催日に会場を使用することを許可した書類 |
4.その他の書類
書類名 | 備考 |
---|---|
興行内容を知らせる広告・チラシ等 | まだラフの状態でも、興行情報がきちんと入っていればそのコピーで構いません。 |
返信用封筒(簡易書留用) | 返信先住所を明記し、392円分の切手を貼付したもの。 |
eスポーツの外国人選手を日本の大会へ招へいするための流れ
ここからは具体的に大会を企画してから外国人選手が入国するまでの流れを詳しくみていきましょう。
1.申請準備
- 開催施設の選定・仮契約
- 来日スケジュール、滞在場所の予定作成
- 主催者、招へい元などの決定
- 開催資金の確保
- 招へい人の確定
- 出演契約書の締結(報酬、日時などを確定)
2.在留資格認定証明書交付申請書の作成
- 必要な書類の収集
- 招聘理由書の作成
- その他、必須とされている書類以外にも、特に招へい元が初めて興行で申請する場合などは、会社の事業内容、イベントの予算書、招へいする外国人のこれまでの活動実績など出来るだけ多くの資料を用意します。
3.在留資格認定証明書交付申請書の提出
出入国在留管理局へ、招へい元の職員、もしくは申請取次行政書士等が代理で提出します。
特に問題もなく審査に通ると、あらかじめ申請時に提出した返信用封筒にて在留資格認定証明書が送られてきます。どうしても時間がない時は、審査が終了したことを確認したら、郵送せず入管にて手渡しで受け取ることもできます。
4.書類審査・追加書類の提出
審査の過程で、書類に不備があったり申請内容に不明な点があると、封書もしくは電話にて追加書類の提出を求められます。通知があった場合は、早急に書類を準備して出入国在留管理局へ提出します。
5.在留資格認定証明書を海外へ送付
無事に在留資格認定証明書が交付されたら、氏名・生年月日などが合っているか今一度確認したのちに海外にいる外国人に国際宅急便などで送付します。入国の際に空港で止められる、途中で紛失するなど万が一のトラブルに備えて、必ず日本の側でもコピーを取っておきましょう。アメリカ人の場合、査証申請の際に契約書のコピーも求められるので、一緒につけて送ってあげましょう。送付したら、本人にいつ頃到着するか伝え、確実に受け取ってもらうようにしましょう。
6.在外公館にて興行ビザ(査証)の申請
ビザを取得する本人は、送られてきた在留資格認定証明書とパスポート、ビザ申請書、写真、その他身分証などを持って、その国の日本大使館または領事館に行き、ビザ(査証)の申請をします。ビザの申請から発給までの時間は、正式には「5営業日」とされていますが、時間がない場合は申請予定の日本大使館(領事館)に事前に連絡して、発行までの期間の短縮が可能か相談してみてください。申請は、平日日中(午前のみの領事館も多いです。)しかできませんので、スケジュールを空けておくように本人に伝えてください。
※在留資格認定証明書を取得したのみでは、来日することができません。必ず、査証を発給してもらってください。(時々、査証免除国の方が手続きせずに在留資格認定証明書とパスポートを持って来日してしまうことがあります。)
7.来日
ビザが発給されたら、発給されたビザとパスポートを持って3ヶ月以内に入国してください。
eスポーツの大会ではビザの申請は急ぎ対応が必須
興行の在留資格認定証明書の交付にかかる期間は、必要な書類がきちんとそろっていることが前提で2週間ほどです。書類が足りなかったり不備があったりすれば、さらに時間がかかることになります。
少しでも時間に余裕がないと思われた場合には、一刻も早くプロの行政書士にご相談ください。当事務所は最短で申請まで進め、入管との事前相談など入念な打ち合わせのもと、審査期間・終了後の受け取りも最短で行えるノウハウを持っています。また在留資格認定証明書を取得した後の海外での査証申請までも確実に行えるように、最後まで完全にサポートします。
書類作成・収集から申請代行、許可までのサポートを任せることで、大幅に時間も短縮でき、ご担当者様は安心して大会の準備を進めることができます。