2023年8月1日施行で、興行ビザの仕組みが大きく変わりました。
今回はこの変更について詳しく説明します。
これまでの興行は大きく分けて、4つの基準にわかれていました。
- 1号 ライブレストラン、クラブ、キャバレーなど飲食を提供する場で1日50万以下の報酬で行われる興行、客席定員100人未満の小規模施設で営利法人が運営する施設での興行
- 2号 客席定員100人以上で飲食を提供しない施設で行う興行や、報酬が50万以上で15日以内の滞在のものなど、比較的規模が大きく短期の公演(コンサート、イベント、フェスなど)
- 3号 プロスポーツ、格闘技、サーカス、プロダンス競技、プロゲーム大会など、演劇,演芸,歌謡,舞踊又は演奏以外の興行をするとき
- 4号 興行以外の芸能活動(レコーディング、撮影、プロモーションなど有償での興行以外の活動)を行うとき
それが今回の新しい基準では、以下のように変わりました。
- 1号 イ これまでの1号で風俗営業の店を除く施設での興行
1号 ロ これまでの2号にあたる活動(区分けが以前の2号とは微妙に変わっていますが、そこは後述します。)
1号 ハ これまでの1号(風俗営業店を含む) - 2号 これまでの3号
- 3号 これまでの4号
となっています。
そして、1号ロの中でも(1)から(5)まであり、それが従来の2号と対応しています。
- 1号ロ(1)(2)(3)がこれまでの2号イ、ロ、ハ(公共団体主催のもの、テーマパークなど)
- 1号ロ(4)が2号ニ(「客席部分の収容人員が」100人以上で、飲食を提供しない施設で行う興行)
- 1号ロ(5)が2号ホで、報酬が1日50万以上で「30日以内」の滞在のもの
となります。
ここで太字にした「客席部分の収容人員が」100人以上という点と「30日以内」というのが文面上変わった点です。
①「客席部分の収容人員が」100人以上
これまでの「客席の定員が」100人以上と何が違うのでしょうか?
これまでの規定は、入管の審査要領ではこのように定められていました。
「建築基準法による建築確認,消防法上の防火設備の設置基準との関係で各施設毎に定められている収容定員で客席部分に係る数値をいう。客席数は,原則として固定された座席の数をいう。」
この規定により、今までライブハウスやCDショップ等のインストアイベントなどが「定員100人を満たさない」とされてきました。
そのため「椅子を100席置いた写真を提出せよ」というようなことが当たり前のように求められてきたのです。
それが立ち見などでも100人が収容出来ればOKということになったため、ファンミーティングの場所設定などは大幅にやりやすくなることが見込まれます。
②「30日以内」の滞在
これは単純に今まで「1日50万以上報酬15日以内」という規定の日数が延びたことを指します。
これまで全国を回るツアーなどで15日を超える日程を組みたくてもこの規定があるため、一旦出国してまた来るというようなことも行われていましたが、30日に伸びることで日程が組みやすくなります。
【運用における変更点】
実は省令上には書かれていない重要な変更点が、そっと入管のホームページに書かれています。
いわゆる「運用」と呼んでいるもので、解釈を変えることで実際の改正と同じように大きな変更となります。
それは「客席において飲食物を有償で提供せず」の規定についてです。
これまでは、「客席と一体性のある場所にバーカウンターを設けて飲食物を提供する場合は,客席において飲食物を提供することに当たる。(審査要領より)」とされてきましたが、新しい運用においては以下のように変わりました。
「・ 客席と一体性のある場所に設置されているバーカウンター等で飲食物を提供する場合であっても、客がバーカウンターにおいて飲食物を受け取り、自ら客席に運んで飲食する場合は、客席において飲食物を提供することには当たらないこととしました。」
この運用により、100人以上収容可能なライブハウスが「1号ロ(4)」で行うことが可能になりました。
つまり、従来ライブハウスなどでの興行は50万以上15日以内でなければいけなかったのが、報酬の額の規定なく3ヶ月という期間が与えられることになります。(正確に言うと「日本人と同等の報酬」は必要ですが、ごく一般的な報酬で構わないということになります。)
これまで2号で申請してきた会社様は、新たな基準のどこに当てはまるかわからない点が多くあると思います。ご不明な点は当事務所までお問い合わせください。
【新設された「1号イ」について】
なお、新設された「1号イ」については、興行経験3年ある役員、過去3年の興行契約に基づく報酬支払がされているといった要件を満たすと、かなり自由に来日を設定することが可能になります。
その辺り、どのような書類で証明するのかなどの運用を見ながら、また後日ご説明します。
ただし、この「1号イ」の招へい機関として最初に認められるためには、最初に「1号イ」を申請したときにかなりの審査期間を要することが予想されます。来日までの日程に相当の余裕があるときに行うことをお勧めします。